卒業生に話を聞こう

田付 まゆ さん

現在どのような仕事をしているか

私は今パラオに住んでいて、派遣員として2年間の契約で在パラオ日本国大使館に勤務しています。同期の87名が世界中さまざまな国に行っています。私も契約が終わったら一度日本に帰り、次のステップを考えようと思っています。

文化人類学専修で学べたこと

私が初めて文化人類学に触れたのは学部一年生の文化人類学基礎の授業のとき。そこではこれまで見たり、聞いたりしてこなかった世界の側面に触れられるような気がして面白かったです。

文化人類学を通して学べたことはとても基本的なことですが、日常的に私たちは自身のフィルターみたいなものを通してさまざまなものを見たり、聞いたりしているということです。だから物事を決めつけたりせず、「当たり前」とか「普通」とかという言葉の使い方にも気をつけないといけないなということを学んだと思います。

大変だったこと

特に修士論文を書くときで、まず自分で興味のあるテーマを設定し、それに合った文献を探し、調査の切り口や実際誰にどのような調査をするかというのを考えて、その後読んだ本とその理論をいかにこのような調査に組み合わせるかを考える作業が本当に大変でした。

楽しかったこと

難しい本を分からないなりに読んでみることです。たくさんの文献にあたっていくなかで、前に読んだものとのつながりに気づけたりしたのが楽しかったです。

あとはやっぱり調査ですね。調査対象のクルド人の方が、何度も会っているうちに心を開いてくれるようになって嬉しかったです。現在でも友人として連絡を取り合っています。調査をしているときは、授業後調査に行ったり、料理を振舞ってもらったり、さまざまな会話をしたりして一緒に時間を過ごしました。

文化人類学を学んで役に立ったこと

「当たり前」を疑うようになったことです。また、知らないことや新しく出会ったことに対しても驚かないようになりました。パラオの地元の人々は時間にルーズで、すぐに向かうと言ってから1時間ほど後に到着したりするんです。時間の概念にもいろいろあるのだな、と思えるなど、人類学を学んで身についた「寛容さ」が日常にも生きていると感じることがあります。

文化人類学を志望する人への期待

向いていると思うのは決めつけや思い込みのない人、オープンマインドの人、積極的に考えることのできる人かな。

何事にも興味を持って、国内・国外に関わらず自分が暮らしている・知っている世界の外に出て行くことが好きな人は文化人類学に向いていると思います。自分がそれまで見てきた・聞いてきた事の中に閉じこもるのではなくてね。

そうすることで新たな発見や出会いがあったりもするのだと思います。

あなたにとって文化人類学とは

学部生の時に、授業でアマゾンの研究をされている教授のお話を聞いて衝撃を受けました。また、鈴木教授は文化そのものを問い直していたりする。そういったことに触れたことが高校までの答えが一つに定まっていたり、たくさん暗記したりすることだけが勉強であるという考え方を変えるきっかけになりました。

学部生の時にカナダへ留学に行ったときも、それまでの「普通」とか「当たり前」を最初から覆されました。同じように暮らしていても、いつも見ている風景に対してちょっと違う視点から疑ってみる、このように世界を見ることができるようになったのも文化人類学のおかげだと思っています。

文化人類学は世界を見る視野を広げてくれ、同時に、一つの物事をより深く考えさせてくれるきっかけになる学問だと思います。