小谷 真吾Shingo Odani
業績など
研究テーマ・研究対象
生態人類学、環境人類学
パプアニューギニアやパラオなどオセアニア地域、マレーシアのオランアスリなど東南アジアの少数民族、日本各地の農林水産業従事者
文化人類学を研究するきっかけ
生態人類学が文化人類学なのかは微妙なところですが、詳しくは入門書の『人類学とは何か』でも批判的に読んでみて下さい。
もともと霊長類の生態に興味があり、生物学的なフィールドワークを志していました。学部生時代に、屋久島でサルの観察のかたわら地元の方々の話を聞いたり、人類学の先達から世界各地の文化・社会を学んだりするうちに、文化の多様性の方に興味を持つようになりました。
また、様々な偶然が重なってパプアニューギニアとマレーシアが主な調査地になった訳ですが、結果的には両地域ともに自分にとても合ったフィールドであると思います。
ひどい花粉症なので、乾燥地よりは 熱帯雨林の方が結果的に体に合っていたし、さらに両地域ともに珍しい食べ物がたくさんあり、研究目的においても個人的嗜好においてもフィールドとして理想的なのです。
現在進行中のプロジェクトのキーワード
- バナナ(バショウ属栽培種)の系統解析を通じた、オセアニア地域史およびヒトの移動誌の考察
- バナナをはじめとする根栽(根菜ではない!)農耕の再検討を通じた、リゾーム農(あるいはエキステンシブネス)の提唱
- 定住化する狩猟採集民の人口動態の分析を通じた、モビリティと出生率・死亡率の関係についての考察
- アジアの伝統暦法は「異常気象」を予知できるか?
- 三元ニッチ構築モデルによる物質と心の相互構築関係の解明?
- 「縄文鍋」!
千葉大学に在籍している/したい人への入門書
ニューロマンサー
著者:ウィリアム・ギブスン
訳者:黒丸 尚
出版社:早川書房
発行年:1986年
人類学とは全く関係ないですが、千葉大学に在籍するならこの本含めた「スプロール三部作」は必読です。
サイバーパンクの中心は、ロスでもなくサイタマでもなくチバなのです。あったかもしれない未来の千葉を見聞してみて下さい。
中島敦の南洋物は、今は失われたオセアニア世界の姿、あるいは今も失われていない「日本人」からオセアニアの人びとへの視線が読み取れて面白いです。南洋物はこの本だけではないので探してみて下さい。「光と風と夢」はスティーヴンソン (『ジキル博士とハイド氏』などの作者)の伝記でもあり、「わが西遊記」はオセアニア全然関係なく、カフカっぽい中島敦の思考が垣間見れて興味深いですね。
生態人類学に興味がある人への入門書
人類学とは何か
著者:ティム・インゴルド
訳者:奥野 克
訳者:宮崎 幸子
出版社:亜紀書房
発行年:2020年
人類学がどういう学問なのかについて、流行りの考え方を知っておくのもいいでしょう。
生態学―概念と理論の歴史
著者:ロバート・P. マッキントッシュ
訳者:大串 隆之、井上 弘、曽田 貞磁
出版社:思索社
発行年:1989年
生態学がどういう学問なのかについて、歴史から知るのもいいでしょう。
上橋氏は著名な作家ですが、同時に文化人類学者(かつオセアニア研究者)でもあります。
小説の内容にさりげなく文化人類学的思考や知見がふくまれており、肩ひじ張らずに人類学に触れることができます。人類学を全く意識せずとも、そもそも小説として非常に面白い著作なのでお薦めですね。