千葉大学文化人類学研究会 第4回拡大研究会

日時場所:2025年7月8日、14:30-16:00、アカデミックリンクセンター「きわみ」

講演者:黄 信者(立命館大学衣笠総合研究機構 専門研究員)

タイトル:気功をめぐる人類学的探究:科学的および解釈的アプローチから情動的経験へ

要旨:気功は、しばしば「伝統的な中国の身体技法」として語られてきたが、その研究アプローチは多様である。従来の先行研究においては、自然科学的手法による〈気〉の物質性の検証、臨床的観点からの治療効果の測定、あるいは中医学や道教・儒教といった思想体系における〈気〉の概念的整理が中心であった。本発表では、こうした多領域にまたがる気功研究の展開を概観した上で、文化人類学的視点から「情動的経験(affective experience)」という切り口によって〈気〉や気功を再考する可能性を提示する。具体的には、現代中国における気功実践の民族誌的事例を通じて、〈気〉と〈治〉がいかに具体的な実践によって生成され、人々にとってどのような意味を持ちうるのかを論じる。気功を単なる身体技法や治療法としてではなく、感覚や情動を介して経験される「生きられた実践」として捉え直すことにより、身体・医療・宗教をめぐる人類学的議論との接続を図る試みである。

写真:フィールド先である上海気功研究所の「中華気功史陳列館」に展示された、〈気〉の概念を象徴的に表現したインスタレーション

  • URLをコピーしました!